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ストーマといっしょの生活
体 験 談










体 験 談

【海外旅行体験談】
2週間半の海外旅行、1週間船上生活にもチャレンジしてきました♪
東ちかこ
 オーストラリアで生活し始めて10年目の2010年9月、大腸がんの1つが破裂し緊急手術。大腸の損傷が大きかったためにストーマ造設となりました。術後、治療に専念するため急遽日本に帰国。11月に治療開始後1年を記念し、お世話になった友人や同僚、医療関係の方々に直接お礼を言うために、オーストラリアを訪れることにしました。旅程は全部で2週間半。大好きなシドニーに10日間と、タスマニア州の州都ホバートに8日間です。
 最初はシドニーだけの予定だったのですが、ホバートに滞在中の友人カップルが招待してくれたので思い切って行ってみることに。実は彼ら、8年前に退職して小型ヨットで生活しているんです。ので、私もホバート滞在中は彼らとヨットで生活することに。いくら慣れ親しんだ国とはいえ、ストーマになってから初の海外旅行、しかも船上生活つき(汗)。パウチのケアなど心配でしたが、「絶対にできる!」と自分に言い聞かせて行ってきました。
 11月中旬、成田空港を出発。飛行時間は9時間半です。最初は気になって1時間ごとにトイレに行きパウチを空にしていたのですが、最後の5時間は熟睡。気圧の変化でパウチが膨らむこともなく、無事シドニーに到着しました。友人らと1年振りの再会。楽しく数日過ごした後、飛行機でホバートへ移動。ホバートは、入り組んだ湾に縁取られた緑豊かな美しい街です。空港では友達のカップルが最高の笑顔で迎えてくれました。
 早速ホバート市街にあるハーバーへ行ってみると、彼らのヨットはメインストリート脇の岸壁に無造作に横付けてあります。どうやってヨットに乗るのかと思ったら、なんと歩行者道路から落下防止用のロープを「よいしょっ」と跨いで跳び乗るだけでびっくり。ちなみに彼らのヨットはカタマラン(双胴船)というタイプで、船底が丸みを帯びたW字型をしていて安定性が高いのが特徴です。甲板には日光浴用のソファーが2つあり、船内には家族の写真が飾られたアットホームな雰囲気のラウンジに2人用の寝室が2つ、カウンターキッチン、トイレ、そして小さなシャワーが付いています。
 ヨットに乗り込んでまず、友達からハーバーに停泊している際のトイレマナーを教えてもらいました。湾内では水を極力汚さないため、小はヨット内のトイレを使っていいが、大の場合は50メートル離れたハーバー利用者専用のトイレを使うとのこと。しかし、夜中にパウチを空にする必要がある私、一瞬不安になりました。「え、じゃ夜どうするの?ロープまたいで、トイレまで歩くの?寝ぼけて海中に落ちたらどうしよう。しかも私泳げないし・・・(汗)」友達に相談したら、「あーそうだった。ちかこはパウチがあったんだね。ごめんごめん、もちろん夜はヨットのを使ってね。溺れられちゃ困るから」と言ってくれて一安心。ということで、ヨットで7泊したのですが、波に揺られてるとなんだか気持ちよくって本当によく眠れました。
 それでも習慣ってすごいもので、毎晩夜中にむくっと起き、無意識にパウチを下から両手で支えつつ、トイレにちゃんと行ってました。たまに波で地面が動くのがわかったんですが、なんとか寝ぼけながらも、ぐーっと足を踏ん張ってたのか一回も転びませんでした(笑)。
 滞在中天候のよい日を選んでセーリングにも連れて行ってもらいました。ホバート港を出て一時間程帆を張って航海すると、人気のない美しい入り江に到着。その日はそこで錨を下ろして一泊することに。寝室の小窓から覗く夕日や星空の荘厳な美しさ。やっぱり生きてるっていいなと実感。あっという間にホバートでの楽しい滞在も終わり、再びシドニーへ。仲間達と名残惜しい時間を過ごした後、半年後にまた帰ってくると約束して帰国の途に。
 ところが、最後の最後で汗がダーっと出る事件発生。なんと、シドニー空港でセキュリティーチェックに引っかかったんです。金属探知機を通った後、検査官に爆発物所持の検査をすると言われ、棒状の探知機を手荷物と体に当てるチェックを受けました。ここまでは何回も経験あるのですが、今回はさらに「衣服の上から手で体を軽くたたいて(pat)、爆発物を持ってないかチェックする」と言うではないですか。私も強気に「かまいません、チェックしてください。」と言ったところ、検査官が「絶対に液体物(liquid)とか持ってないわね??」と語気を強めて質問するではないですか。思わず、「液体物???確かに持ってるけど、パウチに入っておへその横に付いてるけど、でもこれ爆発物じゃないし、第一私は危険人物じゃなーい!!」と、叫びたかったのですが、ここは落ち着いて、ブーケさんからいただいたメンバーズカードの英文説明のページを検査官に見せました。それを読んだ検査官は即納得してくれ、「じゃ、気を付けて触るから心配しないで」と言ってくれ、30秒で無事検査終了。大汗かきながらも無事帰国の途に着いたのでした。
 最後に、皆さんがこれから海外旅行される際に参考になればとお伝えしたいことが2つあります。1つ目は簡単な医師からの診断書(英文)とブーケのメンバーズカードを常に携帯すること。特に診断書があると空港でチェックインする際、航空会社によっては座席の優遇をしてくれることがあります。私の場合幸運にも、往路共トイレに近い通路側席とその隣の席合計2席を私一人のために確保してくれ、本当に有り難かったです。それからブーケのメンバーズカードは絶対持っててくださいね。すっごく役に立ちます。2つ目は、自分の健康状態に理解のある人と旅行すること。私がホバートでお世話になったカップルの奥さんは、乳がん経験者です。心配しすぎず暖かく見守ってくれる存在で、本当に心強かったです。
皆さん、不安でふと立ち止まってしまう時もあるかと思いますが、みんなで前を向いて少しずつ歩んでいきましょう。

ブーケ会報vol.38 2012.2月発行 より
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